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Artist Story 作家が語る作品づくり

橋本 知成 Tomonari Hashimoto

私は、陶で彫刻的な作品を主に制作しています。大型の作品が多く、大きいものでは高さ2メートルを優に超えます。 成形には手捻りというひも状の粘土を積み上げる技法を用います。そして、成形時には削らないという制約を自らに課しています。 焼成は、素焼き、釉薬を掛けて1000~1100℃での焼成、約500℃の炭化焼成の3回(最近は素焼きの工程を省いている)です。2回目の焼成で溶かした釉薬は、最後の炭化焼成によって色やテクスチャといった様々な表情を見せます。

焼成について少し詳しく説明します。使用する釉薬は酸化金属を多く含んでおり、焼成における酸化と還元の作用によって様々な色の変化を見せます。1000~1100℃での焼成は電気もしくはガス窯を使用します。炭化焼成は、屋外で作品の周囲にレンガを積み上げ窯を作り、ガスバーナーで焼成します。約500℃になったところでガスを切り、窯の蓋を開け籾殻を投入します。この時窯内部は酸化と還元が入り混じった状態となり、炎と煙によって釉薬の色が変化します。

製作中の橋本氏

私は作品制作において、手捻りにより土の膜を形成しそれを焼くという、いたって原初的で単純な行為を繰り返すことで、目には見えない、しかしそこには確かにある存在、確かなる気配を求めてきました。

彫刻家の父の影響もあり、幼少の頃よりものづくりは身近なものでした。 学部3年生になると専攻に分かれるのですが、陶芸を選択した理由は、消去法という何とも不純なものでした。大学院に進学し、2017年3月に博士学位を取得し長い大学生活を終えました。「焼きものが好きか」と問われるとなかなか即答できない自分がいますが、今現在は土という素材、それを焼くことはしっくりきています。

内観の地平から

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ただひたすらに土を積み上げ、それを焼くという行為は、私にとって自分を律し自己の内面と向き合う時間でもあります。そして、どこか軽薄で表面的に物事が動いている現代社会において、ふと立ち止まって、物事の本質を探ろうとする、また、自己の内面と向き合う、私の作品がそんなきっかけとなることを願っています。

オーナーからのご紹介

はじめて、橋本さんの作品を拝見した時、金属かと思える力強さを感じ、偶然を意図する制作過程にも引き付けられました。私は、穏やかな物腰の橋本さんに、何かを問いながら、突き詰めていく求道者のような姿勢を感じます。私達は、Art作品から自分の何かが、揺さぶられることがあります。その感覚が今、真に必要とされている時代かもしれません。これからどんな道を究めていくのか、まさに楽しみなつくり手です。

ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美

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