Artist Story 作家が語る作品づくり
金属作家
藪内 公美 Kumi Yabuuchi
この世界を作っている元素は120種類にも満たないものですが、その中でも金属元素は多くを占め、私がいつも扱っている金属である銅、銀やアルミニウムはそれだけでこの世界を構成する要素の一つとして存在しています。
そのような金属に対する感動を自覚したのは、鍛金という技法に出会ったからと言えます。鍛金は、金属を打ち延ばしたり絞り技法によって金属の分子を動かしたりして成形する技法で、叩く反発力や張力のような密度を金属に与えることによって鍛金ならではの金属造形が生まれる技法です。
製作中の様子
金属素材を板や塊といった形で見るのではなく、金属分子の集合として見ることによって、分子を動かし私の手を通した行為の繰り返しによって造形が成り立っています。それを意識した時、私にとっては、この世界のあり方自体に対する思考が変化したと思えるのです。そういう金属素材を相手にしていると、物質存在のある瞬間の姿が造形として現れているのだなと感じ、そのような壮大な物語を感じさせるような作品を作りたいといつも願っています。
作品『 story of M 』
作品『 inter-body #1 』
作品『 存在の畢竟 ⅰ 』
制作では、鍛金という技法が身体性を持った行為であるところから、いつもどこか身体のイメージを金属板の形態の中に探っており、人の持つ美しさや悩ましさ、背中で語る感情のようなものを抽象的に表現しようと試みています。また、彫金や刺繍などの文様を施すことによって、幻想的なイメージを持たせ、私的な物語の1シーンを思い浮かべられるような作品を生み出したいと思っています。
オーナーからのご紹介
藪内さんの作品のファンが、どんどん増えている。一見すると、刺繍していることに気づかない位、金属とのほどよいバランス。また、体の中心を刺激する何か・・。それは、分子の集合体である私達の体が、作品と共鳴しているのかもしれない。藪内さんの物語から、私達はそれぞれ自分の物語を描くことができる。それはどんなストーリーだろう。
ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美