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Artist Story 作家が語る作品づくり

和田 真以子 Maiko Wada

私は、主に金属を用いて虫などの小さいオブジェを作っています。

作品を制作する背景にあるテーマは、「蒐集」です。
散歩中に、気に入った小石や流木を持ち帰って窓枠に並べる楽しみや、虫やドライフラワーをガラスケースに収めて棚を埋めていくような楽しみと似た感覚で制作しています。

蒐集は、その人の内面を色濃く反映する行為です。何をテーマとして選ぶか、または同じテーマを集めていてもそれぞれの好みの差は最終的にコレクションの全体像に影響を及ぼします。 作品は制作者を映す鏡と言いますが、私は制作(=蒐集)という行為を積み重ねて、博物館を作るように自己世界を表そうと試みています。

作品『sample』

作品『morpho』

作品は主に金属を使って制作していますが、よく使う技法は金工技法の「透かし彫り」です。

1. 一枚の金属板に模様を描き
2.線と線の隙間にドリルで穴をあけ、
3.その穴に糸鋸の刃を通して模様を切り出します。

金属は素材として強度や柔軟さがあるため、前述したような薄い板を細かく切り抜く加工が可能です。この技法を用いることで、自然界にある繊細な模様や朽ちていくような脆さを表現しています。 また、表現したい色や質感によっては他の素材を使うこともあります。

製作過程

工芸はその成り立ちから、素材と技法という二つの要素と切っても切れない関係を持ちます。自然の素材を使い手作業で作り出したものは人工物でありながらどこか有機的で、「自然物と人工物の境のもの」のような雰囲気があります。 そのような曖昧な気配に唯一無二の魅力を感じて、日々素材や技法の研究、制作をしています。 散歩中拾った小さなものを並べるように、私の作品を棚や壁、窓枠に並べて貰えられれば嬉しく思います。

オーナーからのご紹介

金属そのものは冷たいイメージがあるが、和田さんの作品からは、いつも慈しみやあたたかみを感じる。それは、モチーフへの和田さんの心が伝わるからだろう。また、話をしているとよく古語が出てくる。いにしえから受け継がれているもの、また何千年もの間そこにある自然への敬意のあらわれかもしれない。
作品は形と素材のバランスが絶妙で、実に美ししい。今回は、金属だけではなく石も素材に加わった。繊細な和田作品のファンが多いのもうなずける。彼女の自己世界である博物館を、今後も感じ続けるのが楽しみである。

ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美

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