Artist Story 作家が語る作品づくり
ガラス作家
塚原 梢 Kozue Tsukahara
私は、ガラス胎七宝という技法を用い、ジュエリーや小箱、壁掛け、飾り皿、皿などの制作をしています。
工芸との出会いは短大で金工を学んだところから始まりました。金工の授業の中で、七宝と出会いました。
七宝というのは、主に金属の上にガラス質の釉薬をのせ、電気炉で焼くというものです。綺麗な色のガラスが焼き付けられていることにとても興味を持ったのが、ガラスを学ぶきっかけとなりました。大学に3年から編入し、ガラスを学び始め、ふたつの素材を学んだということをいかした自分の表現を追い求めた際、七宝に辿り着きました。
七宝にもたくさんの技法があり、その中で私が着目したのは、有線七宝と呼ばれる、銀の細いリボン状のものを使う技法でした。透明なガラスの中に銀の繊細な線がきらめく様子は綺麗にちがいない、という思いだけで何もわからないまま作り始めました。のちにそれがガラス胎七宝と呼ばれる技法だということを知りました。
「Flowers Bloom」ブローチ
「ring」指輪
「六花」(むつのはな)皿
作り方は、ガラスの上に銀の線を立てるように置き、その間を埋めるようにパウダー状のガラスをしきつめます。この時、色のついたものや透明なものをその時々により使い分けます。その後、電気炉に入れ焼成し、研磨します。この技法の特徴は、銀で色々な模様(図柄)を描けるということです。
私の模様の素となったものは、植物の茎の断面でした。茎には水を吸い上げるための管がたくさんあり、それぞれ違った形をしています。その茎を切って顕微鏡で見た時の図が、花のように見え、見えないところにもこんなに美しいものがあると知り、その茎の断面図を見て、その模様を施した皿を大学4年に作ったことがきっかけです。
(HANAというシリーズの作品に近い模様です)
その模様から派生させ、今の細い連続模様に発展させました。
工房にて製作中の様子
始めてから10年ほど経ちましたが、日々表現の探求をし続けています。ガラスと七宝、それぞれがそのものでしかなり得ない表現を掛け合わせて、より美しい表情を生み出したいと考えています。 ふたつの素材と向き合い、透明感のある、繊細で美しい作品を作れるよう、これからも精進していきたいと思います。
オーナーからのご紹介
塚原さんは、私どものArtShop月映と27年12月の開業時からお付き合いさせていただいています。作品に対して、いつも真っ直ぐに向き合っていらっしゃる姿に感服します。やさしく愛らしい表情や語り口は、作品の雰囲気と重なります。短い期間にファンも増え、ご注文が多いのも特徴です。私達の中にある優しさや繊細さを呼び起こしてくれる、何かを持っているArtistです。
ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美