Artist Story 作家が語る作品づくり
陶芸作家
佐藤 文 Fumi Sato
私は陶磁器を素材に、主に染付技法を用いた造形作品を制作しています。陶磁という素材は大学一年の時に出会いました。珠洲焼の窯たきの授業で、窯出しの時に真っ暗な灰色の中、皿がひび割れ、自然釉がところどころ光っていたり、火の通り道に沿って色が変化した器たちを見て、焼成による手が及ばない現象やその面白さに魅了されました。また自分の手で形を起こしていくことのできる、土の持つ造形の自由さに魅力を感じました。
わたしの制作の基になっているのは身体と、ものの変形への興味という要素です。元々、人の身体に興味があり、流れる血や傷口を観察したり皮膚のしわを追ってみたりと、身体の中でも特に皮膚や膜状のものに関心がありました。その未知な身体を理解したい欲求と、知ることで生きていることを確かめるような思いが根源にあります。その自分の身体を確かめる作業として身体をモチーフにし、歪ませたり壊したりという行為につながっています。
この歪み、ひしゃげ、ひび、溶け、といった元の形体が変わりゆく現象も興味があり、その壊れかけの危うさや元々の姿を想像させる物語性に関心を強く持っています。またこれらは陶磁器の工程での焼成や硬くて脆い性質と切り離せないものです。
制作工程[素焼き]
制作工程[素焼きの研摩]
制作では磁土を用い、薄い土の膜状の球体を成形し変形させ、素焼き後に絵付けを施しガス窯で還元焼成しています。私にとって染付は、曖昧なものを一つ一つ確実していく作業で、歪んだ胎に文様を絵付けしていくのは、不安定な形を留めさせるための行為です。
作品を通して陶磁という素材の、焼成による変化の面白さやその美しさを感じてもらえれば幸いです。
作品『不確かな寝床』
作品『染付蓋物流水』
作品『青花の皮膚 17-03』
オーナーからのご紹介
ゆがみや割れた形に価値を持たせていくという陶造型は、珍しくないかもしれない。
しかし、そこに美しい染付を施した佐藤作品には、形の個性に気品も加わる。作家の立体感覚と視覚的イメージの卓越性から、生み出される作品から何かを感じてほしい。ゆがみの中に安心感、自由度を感じる人もいるかもしれない。または・・・
ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美