Artist Story 作家が語る作品づくり
ガラス作家
竹岡 健輔 Kensuke Takeoka
『線の軌跡』
ガラスはやわらかさとかたさの間で形態を変化させる。熱を帯びるとやわらかく動き出し、冷めるとその動きを留めてかたくなる。この造形における二面性の対比や変容していく過程に興味を持ち、作品を制作している。
制作風景
私の作品は編み込まれた、ガラスの線による構造体である。まずガラス棒(ケイン)を電気炉でスランピングという技法により変形させ、真っ直ぐなガラス棒と組み合わせることでガラスによる編みを成す。線が集合し縦と横が交わることで面が生まれる。
この編組構造をつくる上での一連のプロセスは、構造の整然性を保つことが狙いであり、こうしてできた二枚の編みのシートを吹いたガラスに貼り合わせ、熱を加えながら少しずつ息を入れる。これは吹きガラスという技法を活かした作品づくりである。ガラスが徐々に膨らむにつれ線は新たな表情を見せ、編組構造はフォルムとともにダイナミックになっていく。
他にも「basket」シリーズに用いるホットワークやキルンワークの重力によって造形するサギングという技法など様々な方法を模索しながら新たなガラス表現を追求している。
制作過程
私がガラスを編むことに着手したきっかけは、日本の竹工芸に影響を受けたからである。竹の張りや弾力といった素材の特性が生かされ、編むことで生まれる形態や線の構造がそのままデザインや形として成り立つ点に惹かれた。また編組品には素材や使い手による経年変化や作者の手のぬくもりが感じられるように、編むことで無機質だったガラスをぬくもりのあるものにしたいと考えるようになった。そして、ガラスの特性に基づく形や構造を考えたときに私が着目した点は、規則的な編組構造が熱や吹く行為によって変化し、それを留めることが出来るという点である。
制作過程
平面から立体、立体からまた平面に。その二つの成り立ちや行き来した軌跡を考える。
溶けたガラスから一本の線が生まれ、やがて構造となり立体となっていく過程が、線の軌跡として作品に現れるのである。
竹岡健輔
オーナーからのご紹介
ガラス作家竹岡健輔は、いま大変注目されているガラスアーティストです。
2018年から様々な賞を受賞している。おもなところでは、2019年国際ガラス展・金沢2019 銀賞 そして、2021年Glass Art Society virtual2021 STUDENT EXHIBITION 1ST PLACE
となりました。これは、国際的な舞台で作品を発表するGAS「Evolution:A Showcase of Emerging International Talent」の学生展で世界で一番(1ST PLACE)となったことを意味します。
まさに、これから空に羽ばたとうとしている若鳥が、力強く羽を動かし飛翔する寸前のように感じます。その最初の飛翔が、Art Shop 月映での個展となり、大変期待しているところです。
竹岡の作品はガラスの棒を編み形を成しています。それがどのように高度の技術が必要かは、ガラスを扱った方なら十分理解できると思います。
作家は、編むことで無機質なガラスから、ぬくもりがあるものにしたいと話しています。今回の個展では、大型作品から小作品まで20点以上展示されます。
安全に配慮して開催します。どうぞ、ご来店くださいませ。
ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美