Artist Story 作家が語る作品づくり
陶芸作家
今西 泰赳 Hirotake Imanishi
陶芸の世界に入るまでは、分生生物学の研究を行っていました。
さまざまな処置をされる実験動物や最新の機器による解析、そして顕微鏡下で観察する細胞。
細胞内小器官であるミトコンドリアを中心に、ガン転移や免疫作用機序などの研究がメインでした
が、顕微鏡下で毎日観察していた「細胞の増殖、分裂、そして死」というものが一番印象的でし
た。
毎日、私たちの体の中では、「細胞の複製と増殖」が行われています。 一般的には、ゲノムから複製、転写、翻訳を経てタンパク質の合成、そして細胞の増殖という流 れを辿っていますが、もちろんその過程で”エラー”も生じます。 毎日、何万何千と細胞の分裂と増殖が繰り返される中で発生するその”エラー”は通常は問題の ないものですが、ごくごく稀に大きな変化をもたらすものであることもこともあります。 それは将来的には”致死”に導くものかもしれませんし、”進化”につながるトリガーかもしれませ ん。
体内でそのような”エラー”を日々発生させ、あるいは一部蓄積させている生物である私が、今は、土という素材を中心に自分自身の手で作品を作り出しています。
作り出す作品は、「体を構成する細胞の延長」と言えるかもしれません。
日々の作品制作の過程でも、もちろん、”エラー”が生じることが多々あります。
その過程を楽しんでいます。
よく、 ”研究者をやっていたのに陶芸家になるなんてもったいない” ”研究者の方が稼げるだろう””両方やればいいのに!” など言われることがあります。 しかし、 「研究者」は今世の中にない定理や理論を研究を通じて証明し「論文として世に発表する」 「作家」は今世の中にないアート表現を自分の中から生み出して「作品として世に発表する」 その「本質」は同じだと日々考えています。
オーナーからのご紹介
ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美