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9月 上田剛 作品展「孔雀のいしのそらのした」

9月に、ArtShop月映としては2回目の上田剛展を開催します。

現在、金沢美術工芸大学非常勤講師も務める上田剛は、鋳金作家として大いに活躍が期待されています。

原始時代の化石を思わせるような作品、また宇宙をイメージできるような壁面作品をご存じの方もいらっしゃるかと思います。 一言では表せないくらい制作範囲が広い上田氏。今回のタイトルは「孔雀のいしのそらのした」。

詩的な感じのタイトルを知って作品がどのように展示されるのか、期待が膨らんできます。   宮永 満祐美

【期間】2021年9月1日㈬~2021年9月26日㈰

【時間】10:00~18:00 ㈪㈫定休日  9/20㈪は祝日のためオープン 最終日は16時まで

※作家在廊予定日は9/5㈰9/18㈯

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個展タイトル「孔雀のいしのそらのした」について  上田剛

孔雀のいしのそらのした 雪融の流れをのぼって行く

「修羅と春 第二集」

宮沢賢治は少年時代から鉱物好きで、彼の作品には様々な鉱物が色の比喩表現として数多く登場しています。宮沢賢治の生涯は鉱物や地質、土壌学と共にありました。こうした科学的な知見を背景に、賢治はそのイメージを文学的な表現として生み出していきます。とりわけ空の様々な青さを表現するのに、鉱物の青さ(緑を含む)を用いた表現が多くみられます。

この科学的な背景をもとに文学的な表現を模索する姿勢は、様々な材料に対して科学的な方法論を技法として習得し作品を制作する、工芸的な姿勢と重なると考えます。

私の制作は、鉱物を精製して作られた金属を材料として、それを熔かして型に流し込んで成形し、その表面を薬品や火などを用いて様々な色を引き出すという過程を経て制作しているのですが、その色を引き出す行為は金属の表面を化学変化によって鉱物の状態に戻しているということになります。私はその鉱物化していくその姿の中に景色を見、そこから文学的な表現を見出しているといえます。

今回の個展のタイトルの孔雀の石とはマラカイトを指し、銅の錆の緑青と同じ緑を呈します。この孔雀石の緑を空の色の比喩に用いているのですが、私はこの二重の比喩表現に面白味を感じました。孔雀石とは孔雀の胴体のような色の石という比喩が含まれていますが、その石のような空の色ということは、孔雀≒石≒空となります。ということは、「孔雀の空」という表現でも同じ意味であるということになります。しかし、この直接的な比喩よりも、「孔雀のような色の石のような色の空」という二重の比喩が、伝言ゲームのような言葉のニュアンスの歪みを生み、表現の妙を感じるのです。

鉱物(自然)から作られた金属(人工)という素材を加工して造型し着色することで錆(自然)を発生させる。その形状、金属の表面の中に自然の景色を見立てる=比喩を行う(「宇宙のような表情」など)という制作行為が、二重にも三重にも比喩を重ねている私の制作の上で、先の宮沢賢治の表現の姿勢に共感を感じ、「孔雀のいしのそらのした」というタイトルに引用しました。

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