アートショップ月映 ArtShop Tsukibae

Artist Story

作家が語る作品づくり

file NO.6

金属工芸 鋳金作家 河野 太郎 Taro Kawano

河野 太郎

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作品「森のかたち」

作品「森のかたち」

作品「森に熔ける光」

作品「森に熔ける光」

熔けた金属を型に流し込む「鋳金」が、私の扱う技法です。
原型に使用している蝋はとても脆く、手の温度で形が変わってしまうほど繊細な素材です。また、型に覆い熱で熔かし消失させることが前提の儚い存在でもあります。このような不確かな存在を、堅牢な金属に置き換えることはつまり、揺れ動く曖昧な意識を、生命を宿したかたちとして存在させることであると考え、日々鋳金技法と向き合っています。

作品のテーマやモチーフにしているのは「森」です。
私の生家のある三重県には、伊勢神宮や熊野古道などに代表されるように 神聖な森がいくつかあります。これに起因してか幼少から森に対して、憧れや畏れの感情を強く抱いていました。風のある晴れた朝に揺れ煌めく光と音、昼の強い日差しによって形成される重層的な色彩、ひとつの生物の唸り声のような夜の騒めきと気配、昼夜を問わず生まれる深い暗闇。何物にも代えがたい安らぎを生み出す時もあれば、どうしようもない恐怖を覚える時もある存在、それが私にとっての「森」です。
これら両側面の感情が、人に「確かに存在している」という実感を与えるのだと考えています。

制作工程[蝋原型]

制作工程[蝋原型]

制作工程[型込め]

制作工程[吹き(金属の流し込み)]

私の作品、鋳金技法によって表された森は、技法の工程や素材のもつ精神性をかたちに起こし、ひとつの風景として表されることを目指しています。かたちになったままの段階では、作品がまだおぼろげな状態であると常々感じます。しかし、人の目に触れ心を動かした時はじめて、確かな風景へと変わるのだと考えています。物質にしろ感情にしろ、人が何かを得る際は、純粋なよろこびだけを感じる事は難しく、必ず痛みや不安を伴います。
それらを経た先に見える風景から、私が森から受け取ったことと同じような「確かに存在している」という強い実感を生み出すことが出来れば幸いです。

オーナーからのご紹介:

河野さんとは開業依頼のお付き合いです。私どもに作品を出してくださることを、一番先に返事してくれた作家さんです。
思い出すと、あの時の笑顔は森に日差しが当たっているようなぬくもりを感じました。作品に光が当たっている時と、陰にある時と 見え方が違います。その両方から、何かを受け取ることができるのかもしれません。そこに、エネルギーを感じる人、炎のような風のような、動きを感じる人もいるかもしれません。安定感を感じる人もいるかもしれません。
ぜひ、体感していただければと思います。

ArtShop月映 オーナー 宮永満祐美